映画『木の上の軍隊』感想~若き沖縄出身監督が描く戦争映画の現在地

第2回鶴見ウチナー国際映画祭にて『木の上の軍隊』(監督・脚本 平一紘)を観ました。

今作は沖縄戦において激しい戦火から逃れ、巨大なガジュマルの木の上に約2年間も隠れた二人の兵士の実話をもとにした作品です。

「この世のありったけの地獄を集めた」と形容される沖縄戦を沖縄出身監督が映画化するとなると、『プラトーン』のようにその悲惨さを強調する”反戦啓蒙型”アプローチを予想しがちですが、今作はむしろ兵隊2人の個人的体験をリアルに描写して話が進みます。

これは近年の戦争映画に増えてきた”体験没入型”アプローチで、戦争の悲惨さや反戦啓蒙をメインとして強調しすぎず、戦争のリアルを観客に疑似体験させてその解釈も委ねる手法。

平監督は「子どもの頃に戦争体験者の話を直に聞いてトラウマになり敬遠した」「そんな自分が戦争をどう描くべきか考えた」と語っており、その答えが今作の「恐怖と啓蒙より臨場体験」のアプローチなのでしょう。

一本の映画だけで戦争のすべてを語り学ぶことはできません。

それは教育現場やメディアなど複合的アプローチが必要で、戦争映画というジャンルはその理解の入口、追体験の場として考えるのが今の時代は受け入れられやすいのでしょう。

戦争映画というジャンルには「啓蒙」「エンタメ」の2つの要素がありますが、時代の流れと共に後者重視にシフトしてきました。

それは決して戦争を軽く扱っているわけではなく、「啓蒙のための戦略が変わった」「戦争の恐ろしさを”無意識下”に伝える」という”進化したアプローチ”と解釈されています。

従来の戦争映画を知る人からすると「物足りない」という感想もあるかもしれません。

ただ「怖がって敬遠されて見てさえもらえない」のはマイナスでしかなく、戦争の記憶が薄れていくなかで「反戦平和への思い」という目的からぶれることなく、時代に合わせて柔軟にアプローチする。

それは正しい知恵なのだと思います。

『木の上の軍隊』には今も続く沖縄の苦悩の構図や、戦争の理不尽さを伝える場面もしっかりと含まれています。

若き沖縄出身監督が戦後80年の節目に”アップデート版”戦争映画で戦争を語り継ぎ、ウチナーンチュの先人たちのバトンをつないだことに敬意を表します。

(来間)

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