「辺野古が唯一の解決策」「県外移設は不可能」論が崩壊した3つの理由

果てしなく膨れ上がる工費、完成の目処が立たない軟弱地盤の改良工事、そして米側からすら漏れはじめた「辺野古が完成しても普天間は返せない」という本音。

「世界一危険」と言われる普天間飛行場の返還条件として進められている名護市辺野古への新基地建設は、今や誰の目にも明らかな行き詰まりを見せています。

「本当に辺野古に巨大な滑走路を作る必要があるのか?」 現在の軍事的な実態と米軍の最新戦略を読み解くと、政府が長年固執してきた「辺野古唯一の解決策」という前提が、三重の意味ですでに崩れ去っていることがわかります。

行き詰まりを打破するためのキーワードは、「そもそも存在しなかった65海里の壁」「米海兵隊自身が進めている機能分散(EABO戦略)」「既存基地の連携活用」の3つです。

本記事は、沖縄みらいchの基幹提言である【2026年版】辺野古・普天間問題解決への「修正容認案」提言の論理的支柱を補強するため、「なぜ辺野古に大規模な滑走路は不要なのか」を軍事的実態に踏み込んで解説するものです。

目次

1. 県外移設を潰した「65海里の壁」は、そもそも存在しなかった

2009年、当時の鳩山政権は「最低でも県外」を掲げ、鹿児島県の徳之島への移設を模索しました。しかし結果的にそれは頓挫し、辺野古回帰へと追い込まれます。

その際、防衛省や外務省が「県外移設は不可能」とする最大の根拠として持ち出したのが「65海里(約120キロ)基準」でした。「沖縄の地上部隊と、それを運ぶ普天間のヘリ部隊は、65海里以内にいなければならない」という軍事的な縛りです。沖縄本島から約200キロ離れた徳之島ではこの基準を満たさない──。この説明で鳩山首相は県外移設を断念し、政権そのものが退陣に追い込まれました。

ところが、この話には衝撃的な続きがあります。

2015年、琉球新報が直接米海兵隊に取材したところ、在沖米海兵隊は「65海里基準というものは、海兵隊の公式な基準・規則には存在しない」と明確に回答したのです。米議会での質疑でも、外務省は在日米大使館から「特定できない」との回答を受けていたことが認められました。

つまり、この30年間「県外移設は軍事的に不可能」として政治を縛ってきたあの「65海里の壁」は、日本側の官僚が米側の存在しない基準を根拠に総理大臣を誘導した、あるいは米側の非公式な口頭説明を官僚が真に受けて文書化した、いずれにせよ正式な軍事基準としては存在しなかったものだったのです。

さらに言えば、仮に過去にそうした運用上の目安があったとしても、現在はもう意味をなしません。普天間基地の主力機は古いヘリコプターからオスプレイ(MV-22)へと置き換わり、速度はヘリの約2倍、航続距離は約4倍になりました。

航空機の性能向上により、「沖縄本島内に新しい基地を作らなければならない」という物理的な絶対条件は、二重の意味で過去のものとなっています。

「県外は軍事的に無理」という呪縛は、事実に基づかない政治的フィクションだった──まずこの出発点を共有する必要があります。

2. 米海兵隊自身が進める「分散戦略」——EABOとフォース・デザイン2030

さらに重要なのが、アメリカ海兵隊自身の戦略の劇的な変化です。

現在、米海兵隊は中国のミサイル技術の向上を背景に、「遠征前進基地作戦(EABO:Expeditionary Advanced Base Operations)」という新しい作戦構想へシフトしています。これは、巨大な基地に戦力を集中させると敵のミサイルで一網打尽にされるため、「部隊を小さく分け、島嶼や沿岸部の拠点を転々としながら戦う」という分散型の戦術です。

米海兵隊が2020年に発表した「フォース・デザイン2030」は、この構想を実現するために既存の海兵連隊を「海兵沿岸連隊(MLR)」に改編することを明記。2022年にはハワイの第3海兵連隊が最初に改編され、沖縄に所在する第12海兵連隊も2025年までにMLRへの改編が進められています。

この戦略のもとでは、完成に何十年もかかる辺野古の巨大な固定基地は、もはや「時代遅れの標的」でしかありません。実際、米軍関係者からも「辺野古計画は1990年代に設計された旧来型の発想のまま」「完成した頃には米軍自身の運用構想と合わない施設ができあがる」との懸念が示されています。

そして重要なのは、この分散の動きがすでに具体的に、九州で進行しているという事実です。

  • 陸自オスプレイ17機全機を佐賀駐屯地に移駐完了(2025年、佐賀空港で年間最大約4640回の離着陸)
  • 航空自衛隊F-35B 42機を宮崎・新田原基地に配備(馬毛島と一体運用)
  • 鹿児島県馬毛島に自衛隊基地を建設中(米軍FCLPと自衛隊の共同訓練拠点、主滑走路2450m)
  • 鹿屋航空基地に米海軍P-8哨戒機、米海兵隊MV-22オスプレイが飛来し、日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」の拠点化

つまり、「辺野古がなければ海兵隊が機能しない」というのは建前であり、実態としてはすでに日本各地、特に九州への「機能分散」が具体的・体系的に進んでいるのです。

3. 辺野古工事は「完成しない・完成しても使えない」というダブルパンチ

ここまで述べてきた戦略環境の変化とは別に、辺野古工事そのものが物理的に破綻しつつあります。

2025年12月時点で、大浦湾側の軟弱地盤改良工事における砂杭打ち込みの進捗率は約5%。一方で予算は総事業費約9,300億円のうち約7割をすでに支出済みです。沖縄県の試算では最終的に2.5兆円規模に膨らむ可能性も指摘されています。

砂杭打ち込みは本来4年で完了する計画ですが、現状のペースでは20年近くかかる計算になります。海面下90メートルに達する軟弱地盤の改良は、世界でも前例がありません。

そして、それ以上に深刻なのが、仮に完成しても辺野古の滑走路は機能不全であるという、米側自身が認めはじめた事実です。

2026年2月、衝撃的な公式文書が明らかになりました。米国防総省が米会計監査院(GAO)に対し、「辺野古以外の長い滑走路の確保までは、普天間は日本に返還されない」と正式に回答していたのです。

米議会付属のGAOは2017年の時点で、辺野古の1,800メートル滑走路は「特定の航空機には短すぎる」として代替滑走路の選定を勧告していました。これに対して国防総省は2025年9月、「代替滑走路の選定は日本政府の責任。選定されるまで普天間は返還されない」と回答したのです。

在沖米海兵隊トップであるウォルフォード少将も2026年2月27日、「辺野古施設の滑走路は短い」と公式に認識を示しました。さらに同月には、米海兵隊中佐らがシンクタンクの論文で「日米は普天間と辺野古の代替施設の両方をキープすべきだ」と主張するに至っています。

これは沖縄にとって最悪のシナリオを示唆するものです。「辺野古が完成すれば普天間が返る」という30年来の前提そのものが、米側から公式に覆されつつあるのです。

4. 「長い滑走路」問題の解決策——嘉手納と九州基地の連携活用

では、この「返還条件④:有事の長い滑走路確保」という難題をどう解くのか。

ここで決定的に重要になるのが、「嘉手納と九州基地の連携活用(嘉手納玉突き方式)」という発想です。

嘉手納基地は約3,700メートルの滑走路を2本備え、C-17など米軍のあらゆる大型機を運用可能な、極東最大級の空軍基地です。有事において普天間の「長い滑走路」機能が必要になった場合、嘉手納の空軍機の一部を九州の自衛隊基地(新田原基地・築城基地など)に一時的に分散展開させることで、嘉手納にスペースを作り、そこに大型輸送機を受け入れる──これが「玉突き方式」の骨格です。

この方式が優れているのは、米軍自身のEABO戦略と完全に整合する点にあります。

EABO構想の核心は「大規模固定基地への集中はミサイル攻撃に対して脆弱であり、機能を分散させるべきだ」というものです。嘉手納の航空戦力を一部九州へ分散させること自体が、嘉手納の残存性を高めるEABO的な行動にほかなりません。同時にそれが普天間の長距離滑走路機能を吸収する余地を生み、「分散と集中の二重の軍事合理性」が成立します。

しかも新しい基地は一切必要ありません。嘉手納の既存滑走路、新田原・築城の既存滑走路を組み合わせるだけで成立します。これは「返還条件④」の実質的な充足を意味します。

重要なのは、これは嘉手納の空軍機を恒久的に移転するものではなく、有事の際の一時的な分散展開であるという点です。平時の嘉手納の運用には影響せず、九州の自衛隊基地周辺の住民負担も恒久化しません。

この嘉手納玉突き方式の詳細な組み立てと、普天間返還の8条件との突合については、以下のページで論じています。

👉 嘉手納玉突き方式を含む全体提言の詳細はこちら↓
【詳細版】辺野古・普天間問題の解決に向けた修正容認案2026

5. 現実解:「最低限の辺野古」+「嘉手納玉突き」+「九州分散」の三層構造

以上を踏まえれば、私たちが目指すべき現実的な落とし所「修正容認案」が見えてきます。

① 辺野古は「最低限」に縮小する

大浦湾側の絶望的な軟弱地盤の埋め立てをキッパリと断念し、すでに埋め立てが進んでいる辺野古側(南側)の浅瀬エリアのみを使用。オスプレイやヘリコプターの運用拠点(短距離離着陸帯+駐機場)として活用します。

現行計画のイメージ
修正計画のイメージ

オスプレイは垂直離着陸が可能なため、そもそも1,800メートルの滑走路は不要です。V字案が想定していた長大な滑走路は、日常運用にとってはオーバースペックでした。

これにより泥沼の軟弱地盤改良を回避し、数千億円〜1兆円規模の追加支出と、大浦湾の環境破壊を回避できます。普天間の危険除去は数年以内に実現可能となります。

② 有事の「長い滑走路」は嘉手納玉突き方式で確保

上記で詳述したとおり、嘉手納の空軍機を有事に九州の自衛隊基地へ一時分散展開させることで、普天間の長距離滑走路機能を新設なしで代替します。

これにより返還条件④を実質的に満たし、米国防総省の「長い滑走路が確保されるまで普天間返還せず」という留保を外させる論拠になります。

③ 機能分散は既存の流れに沿って拡大

陸自オスプレイの佐賀集約、F-35Bの新田原配備、馬毛島の整備など、すでに進行している九州分散の流れを、沖縄の負担軽減に直結させる形で正式に制度化します。

これは米海兵隊のEABO戦略とも合致しており、新規の強い抵抗を生みません。

6. 「辺野古も普天間も両方キープ」論への対処

ここで、重要な反論に正面から答えておく必要があります。

本提案の最大のリスクは、「最低限の辺野古+分散」が、米側にとっては「普天間+辺野古+九州分散」の三重負担を正当化する論拠にされうるという点です。実際、先述の米海兵隊中佐論文はまさにこの方向を示唆しています。

このリスクを封じるには、嘉手納玉突き方式を「返還条件④の実質的な充足」として日米間で明文化し、普天間返還をパッケージ合意として不可分に位置付ける必要があります。つまり、「辺野古縮小」「嘉手納玉突き」「普天間返還」をバラバラに合意するのではなく、三位一体の合意として取り決める必要があります。

そしてもう一つ重要なのが、「沖縄基地負担軽減協議会(仮称)の設置」による継続的な交渉保障です。合意後も戦略環境の変化に応じて負担軽減を求め続ける制度的枠組みがなければ、「辺野古縮小で合意したら普天間も残された」という最悪の結末が現実化します。

👉 この協議会の設計と役割については、以下のページで詳しく論じています↓
【詳細版】辺野古・普天間問題の解決に向けた修正容認案2026

7. まとめ:「県外移設」という言葉を使わずに実をとる

過去の歴史が示す通り、政治家が「普天間を県外に移設する」と正面から宣言すれば、必ず候補地の猛反発に遭い、計画は潰れてしまいます。

しかし、看板上は「辺野古への移設」という枠組みを残しつつ、実態として──

  • 軟弱地盤を避けた規模縮小(大浦湾側断念、辺野古側のみ活用)
  • 嘉手納玉突き方式による長距離滑走路機能の確保
  • すでに進んでいる九州分散の制度化
  • 継続協議会による負担軽減の恒常的な追求

──を進めるのであればどうでしょうか。

これは、米軍の軍事合理性(EABO)にも合致し、日本政府のメンツ(方針の根本的転換ではなく「軌道修正」)も保ち、米側の「長い滑走路」要求も満たしつつ、結果的に沖縄の負担を劇的に減らし、普天間の危険を数年以内に除去できる、現時点で最も現実的なアプローチです。

30年間、「賛成か反対か」の二択で語られてきた辺野古問題。しかし現実の問題は二択では解決しません。「存在しなかった65海里の壁」から解放され、米軍自身が進める「分散戦略」の流れに沖縄の負担軽減を接続する──ここから新しい議論を始めるべきではないでしょうか。

(文/沖縄みらいWEB編集部)

👉 本記事で提示した方向性の全体像と具体的な提言はこちら
辺野古・普天間問題解決への「修正容認案」提言【2026年版】


参照リンク

「65海里基準」の不在について

  • 琉球新報「鳩山政権、県外断念の根拠 65カイリ基準存在せず 普天間飛行場移設」 https://ryukyushimpo.jp/news/prentry-215863.html
  • しんぶん赤旗「普天間『移設』 地理的根拠崩れる/米軍65カイリ指針、特定できず」 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-11-03/2018110302_07_1.html

米海兵隊EABO・フォース・デザイン2030

  • 笹川平和財団「米海兵隊の作戦構想転換と日本の南西地域防衛」 https://www.spf.org/iina/articles/yamaguchi_03.html

辺野古工事の進捗・米国防総省見解

  • 沖縄タイムス「辺野古の軟弱地盤、くい打ちの進捗は5% 20年かかるペースで」(2025年12月) https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1744632
  • 朝日新聞「辺野古より長い滑走路ないと『普天間返還せず』 米国防総省が見解」(2026年2月)
  • 東京新聞「辺野古に基地できても『普天間もキープで…』」(2026年2月) https://www.tokyo-np.co.jp/article/470875
  • 産経新聞「『辺野古の滑走路は短い』米海兵隊太平洋基地司令官が認識示す」(2026年2月)

九州分散の実態

  • 南日本新聞「『オスプレイ』の訓練、九州各地で続く…佐賀駐屯地から鹿屋航空基地へ初めて飛来」(2025年8月) https://373news.com/news/local/detail/219621/
  • 防衛省「馬毛島における施設整備について」 https://www.mod.go.jp/j/approach/chouwa/mage/index.html

「沖縄みらいch」は沖繩がより豊かに幸せになるために、大切な部分を残しつつ時代に合わせて価値観をアップデートするメディアです。

沖縄の歩んできた道のりをわかりやすく学び直し、次世代の若者が未来を考えるきっかけになることも目指しています。

沖縄について考えることは、日本、世界を考えることにもつながります。ぜひ皆さんの知恵もお貸しください。

SNSで記事のシェアができます
  • URLをコピーしました!
目次