
「沖縄みらいWEB」は、いち沖縄メディアとして辺野古・普天間問題の現実的解決策として「修正容認案」を提言します。
長い争いと分断が終わり、沖縄の未来が少しずつ明るくなることを強く願います。
辺野古・普天間問題とは
1995年に沖縄で発生した少女暴行事件をきっかけに、住宅密集地に隣接して「世界一危険」とも言われる米軍普天間基地の移設返還を目的として建設が進められている、名護市辺野古沖の新基地建設。


しかし現行計画には様々な問題点があり、根本解決にならない可能性が指摘されています。
現行計画の2つの問題点
改めて、現在進められている辺野古新基地計画の問題点を整理します。
①完成が疑問視される難工事と財政負担
2006年に現行計画が決まってだいぶ後の2018年に、工事海域に90mの軟弱地盤の問題が発覚しました。
そこで日本政府は沖縄県の反対を押し切って70mの砂杭を7万本打ち込むという工学的に疑問視される、世界的に例がない地盤改良工事を行っています。


そして当初の総事業費9,300億円からすでに約8割を消化済みなのに、砂杭の打ち込み作業が進捗率わずか約6.6%、埋め立て土砂の投入量は計画全体の約16%にとどまっています。
日本政府と沖縄の裁判問題等を除いても、予算面・進捗面の両方で工事は計画から大幅に逸脱して難航しています。
今後の工事費の高騰も加わり、最終的な総工費は約2.6兆円になると試算もあります。これは日本の財政に大きなダメージとなります。
アメリカの公的機関やシンクタンク等からも辺野古新基地建設は「工学的に確証が持てない」とする報告が相次ぎ、米軍幹部からは「普天間基地と辺野古新基地の両方を使用するべき」と主張する論文まで発表されています。
例えば、自宅の立ち退きを求められた人が「提供される新しい土地の地盤安定性は見通せない」と判断したら引っ越すでしょうか。

アメリカがそうしたリスクを知りながら、米軍を普天間基地から辺野古新基地へ移転できるでしょうか。
軟弱地盤工事の不確実性と重い財政負担は現行計画の最大のリスクです。
②滑走路の短さ
辺野古新基地の滑走路は約1,800m×2本のV字滑走路で、普天間基地の約2,700mの2/3の長さしかない設計となっています。
※2本でV字型としたのは離着陸部分を陸から離すことによる騒音対策とされています

1,800mの長さの滑走路ではヘリ、オスプレイ、戦闘機までは運用できますが、有事に必要となる大型固定翼機(輸送機等)の離着陸には対応していません

そのためアメリカは「有事の際に使用する長距離滑走路の日本側による具体的選定」を普天間基地の返還条件のひとつにしています。
これは那覇空港が有力視されていますが、昨今のアメリカーイラン戦争を見てもわかる通り、民間施設を軍事利用することは直接的な攻撃目標になることを意味するので、沖縄県は強固に反対の姿勢を貫いています。
日本政府も沖縄県の反発を考慮してなのか「法的枠組みの整備」で返還条件を満たしているとしており、具体的な長距離滑走路を指定していません。
この解釈のズレが「普天間基地は返還されないのでは」という疑念を大きくする要因にもなっています。
三者に不利益をもたらす現行計画
現行計画のままでは日本政府、アメリカ、沖縄それぞれに以下の不利益をもたらします。
日本政府:完成が見通せない工事と際限の無い財政負担

完成の見通せない現行計画にすでに総事業費9,300億円の約8割を消化しており、工事の進捗率は約2割(砂杭打ち込みは6.6%)です。
今後の建設費の高騰も重なって工事費はさらに巨額となり、日本の財政を圧迫することが予想されます。
仮に完成しても「作って終わり」とはならず、メンテナンスに継続的に費用が発生することも確実視されています。
アメリカ:対アジア戦略の計画遅れ

アメリカは沖縄米軍基地を対アジア戦略の重要拠点のひとつと位置づけていますが、辺野古新基地が2030年代後半以降にしか完成しないのであれば、その意図の実現は大きく遅れます。
また、辺野古問題の長期化は日米同盟の最大の政治的摩擦要因となっており、同盟の信頼性と安定性を揺るがし続けています。
沖縄:普天間基地が返還されない

1996年に「今後5〜7年以内に普天間基地を全面返還」と合意されてから30年。辺野古新基地の完成時期は最短でも2030年代後半とされ、現在の工事ペースではさらに遅れる可能性が高く、周辺住民は騒音や事故リスクにさらされ続けます。
辺野古新基地が完成してもその他の返還条件が未達成であれば、普天間基地は返還されない可能性があります。
「修正容認案」の提言
こうした問題を解決するために、私たちは辺野古・普天間問題について現行計画からの「修正容認案」を提言します。以下の3つをパッケージとします。
①辺野古新基地計画の見直し
大浦湾側(北側)の軟弱地盤改良は中止して現在既に埋め立てが進行している辺野古側(南側)の浅瀬エリアのみで施設を完結させます。
V字滑走路ではなく「南側エリアのみを活用したヘリ・オスプレイ拠点」へ変更します。


もともと辺野古移設計画は、過去にこの海域での「海上ヘリポート案」でいったんは日米合意していた経緯があります。
アメリカ側も現行計画が実現困難であることをすでに認識している以上、この変更案は「早急に新基地建設を完了させる」という点から納得できる計画変更と思われます。
日本政府としても実現するかも不透明な軟弱地盤改良を含む難工事に莫大な予算と時間をかける必要性が無くなります。
②大型機の運用は「既存基地のネットワーク化」で対応する
辺野古新基地計画を変更(規模を縮小)した場合、「大型輸送機などによる大規模な補給をどうするか」という問題が残ります。 これについては、「嘉手納基地、本土の米軍基地や自衛隊基地、あるいは沖縄の民間空港などをネットワークとして活用する」案を提言します。
現在のアメリカ海兵隊は、他国のミサイル技術向上に伴い「EABO(遠征前方基地作戦)」という考え方、つまり巨大な基地に戦力を集中させるのではなく、小さな拠点を分散させる方針へと転換しています。すでに岩国基地(山口県)への空中給油機の移駐や、九州の自衛隊基地への分散展開などは進められています。
もちろん、有事に空軍の拠点である嘉手納基地を海兵隊の補給ハブとして優先使用するためには、高いハードルの軍種間調整(空軍と海兵隊の連携)が必要です。しかし、EABOの基本理念に照らし合わせれば、「既存インフラのネットワーク化」による機能補完は、軍事学的に不可能な論理ではありません。
この「代替施設とネットワークの組み合わせ」による機能維持について、日米間での協議のテーブルに乗せ、最終的な合意を得ることを目指します。
③「沖縄基地負担軽減協議会」(仮称)の設置
流動的な世界情勢に合わせて沖縄の基地負担のあり方を検討し、日米地位協定の運用改善などを協議していく継続的な協議会を設置します。
この3つを修正容認案のパッケージとします。詳しい内容は以下のリンクをご参照ください。
それぞれのメリット
この提言がそれぞれの立場にもたらすメリットを整理します。
日本政府のメリット
辺野古計画の縮小(過去の方針の修正)という政治的コストを払う代わりに、普天間返還の実現という30年来動かなかった成果を得ます。大浦湾側の軟弱地盤工事を断念することで、今後発生する数千億円〜1兆円規模の追加支出を回避できます。
地位協定の改定についても、全国知事会が2018年に全会一致で改定を求める提言を出しており、沖縄だけの要求ではないことを根拠にできます。
アメリカのメリット
辺野古フル規模建設へのこだわりを手放す代わりに、日本側の基地受入れの安定性向上と、現実の安全保障環境に即した態勢の早期実現を得ます。
沖縄のメリット
縮小された辺野古施設の受入れという譲歩と引き換えに、普天間返還の確約と、地位協定改定による基地負担の質的改善、そして継続協議会による今後の交渉保障を得ます。
反戦平和派のメリット
長年の悲願であった地位協定の改定、継続的協議会の設置によって今後もさらなる負担軽減を求め続ける制度的保障が得られます。
「平和な沖縄」を実現していくための第一歩です。
どの立場から見ても「100%の解決策」とまでは言えないかもしれません。
しかし、それぞれが少しずつ妥協して歩み寄りを見せることが30年近く続くこの問題を一歩ずつ解決へ進めるために必要と考えます。
争いと悲しみが終わる日を願って

沖縄の米軍基地問題は、長きにわたって沖縄、日本、アメリカの関係に暗い影を落としてきました。
2026年3月には辺野古の基地建設に反対する団体が運航していた船が転覆し、京都の女子高生と船長が亡くなる事故が起きました。
普天間基地移設のきっかけは1995年に沖縄県内の12歳の少女が米軍兵3人に拉致・強姦された事件でした。
2024年には辺野古移設に伴う土砂搬出作業の現場で抗議団体に対応しようとした警備員が大型ダンプカーに巻き込まれて死亡する事故が起きました。
2016年にはウォーキング中の沖縄県内の20歳の女性会社員がアメリカ軍属の男に棒で殴られ強姦・殺害される事件が起きました。
安倍政権時代に辺野古埋め立て工事が開始されて「オール沖縄」勢力との対立が激化して以降、ネットを中心に「沖縄ヘイト」が顕著に見られるようになりました。
沖縄県内でも基地容認派、反対派が分かれ、親戚どうしでも口を聞かないなどの分断が長く続いています。
辺野古問題に反対の声を上げる沖縄県民の気持ちは理解されないことも多いですが、一番根底にあるのは4人に1人が亡くなった沖縄戦や、人権が法的に保障されなかった、「性暴力の嵐」が吹き荒れた、アメリカ統治時代の経験等から来るアイデンティティ、尊厳の問題があると考えます。
つまり、自分たちの誇りである沖縄の美しい海を埋め立てて、過去のトラウマの象徴である米軍基地を建設するというのは、心臓に杭を打ち込まれるほどの痛みとなります。
例えばもし「靖国神社を移設撤去して米軍基地を建設する」と言われた時、容認できる日本人はどれだけいるでしょうか。対価として巨額のお金が落ちるなら賛成派と反対派に分かれて争いが起きるかもしれません。
辺野古問題で沖縄県民が突きつけられているのはそれに近い構図と言えます。
私自身も辺野古の埋め立てが始まった時には自分の胸に杭を打ち込まれたような、片腕を切り落とされたような痛みを感じました。これは理屈や合理性だけでは収めづらい感情です。
それでも沖縄、日本、アメリカで長く続くこの争いと悲しみが終わるなら現状における最善の落としどころを見つけたい。
沖縄を巡る争いや悲しみをこれ以上見たくない。
そして沖縄を愛する次世代の若者の皆さんに少しでも良い環境を残したい。そんな思いで今回の提言を作成しました。
この提言が沖縄、日本、アメリカの間で長く続く争いと悲しみを終わらせる、立場を超えた議論の叩き台になれば幸いです。
(文/沖縄みらいWEB編集部)
